目の前の手帳に手を伸ばす。傷のあるカバーは手によく馴染み、あの頃に戻ったかのような感覚に陥る。少し日に焼けたページを捲ると、たくさんの文字が出迎えた。
「……汚い字だな」
 昔の自分の手書きの文字は、お世辞にも綺麗とは言えないものだがどこか懐かしさと愛しさを覚える。
 一枚。また一枚と捲れば、あの日々が鮮明に蘇る。ああ、懐かしいな。頬が自然と緩む。そのまま、夢中になって読み進める。
「最初は何も知らなかった。でも、あいつらと色々な所へ行って、そして知っていった。この世界の事を。そして、真実を」
 桜並木の美しい町で見たあの風景。海辺の潮風を浴びながら受けた叱責。紅葉舞い散るなか食事をした一時。雪景色に見惚れながら交わした大切な約束。

 思い返そうか。俺の。いや、俺達の旅路の全てを──

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